GitHubをチームや企業で導入検討する際、「Organization(組織)」と「GitHub Enterprise」「エンタープライズアカウント」などの言葉の違いに戸惑うかもしれません。どれも企業向けサービスのように見えますが、実は明確な役割の違いがあります。
本記事では、この両者の違いと関係性を分かりやすく解説します。また、GitHubの各プラン(Free、Team、Enterprise)の概要を網羅的に紹介し、組織のニーズに最適なプランを選択するための実践的な情報を提供します。
GitHubの「Organization」とは?チーム開発の共有スペース
GitHubをチームで本格的に利用する際、「Organization(組織)」という言葉は避けて通れません。これは、チームでプロジェクトを管理・運営するための「共有アカウント」です。個人アカウントが個人の作業スペースだとすれば、Organization(組織)はチーム全員が共同で使う「会社のオフィス」だと考えると分かりやすいでしょう。
個人アカウントとの決定的な違いは、リポジトリの所有者が個人ではなく「組織」になることです。これにより、メンバーの入れ替わりがあっても、プロジェクトは組織に紐づいたまま安全に引き継がれます。また、以下の点でチーム開発を効率化します。
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一元管理 チームのプロジェクトやリポジトリを一つの場所で管理できます。
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権限管理 チームや部署ごとにメンバーをグループ化し、まとめてアクセス権を付与できます。
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セキュリティ 細かいアクセス権の設定が可能になるため、セキュリティが強化されます。
リポジトリとは?
リポジトリとは、Gitを使って管理されるファイルやフォルダの集まりです。プログラミングのソースコード、ドキュメント、画像など、プロジェクトを構成するすべてのファイルがこの「リポジトリ」の中に保存されます。
GitHubでは、このリポジトリをインターネット上で共有・公開することで、世界中の開発者と共同でプロジェクトを進めることができます。チームでの開発において、コードの変更履歴を追跡したり、複数のメンバーが同時に作業を進めたりするためのプロジェクトの「拠点」となるものです。
リポジトリの所有者とは?
GitHubにおけるリポジトリの所有者(Owner)とは、そのリポジトリを管理する権限を持つ主体を指します。この所有者が個人アカウントなのか、それともOrganization(組織)なのかによって、運用の安全性と効率性が大きく変わります。
個人アカウントで作成した場合、リポジトリの所有者はその個人です。もしその人が退職や休職などでアクセスできなくなると、リポジトリの管理権限も失われる可能性があります。
Organization(組織)で作成した場合、リポジトリの所有者は組織そのものになります。これにより、メンバーの入れ替わりがあっても、プロジェクトは組織に紐づいたまま安全に引き継がれ、管理が継続されます。この点が、チーム開発においてOrganizationを利用する最大のメリットです。
GitHubでOrganization(組織)を作成・運用できるプランの種類
GitHubでOrganization(組織)を作成・運用する際には、組織の規模やニーズに応じて、以下の3つの主要なプランから選択できます。GitHubの料金は、選択するプランとユーザー数に応じて決まります。
GitHub Free(無料)
GitHub Freeは、基本的なコラボレーション機能を備えた無料プランで、スタートアップや小規模チーム、オープンソースプロジェクトに最適です。Organization(組織)を作成し、無制限のパブリックおよびプライベートリポジトリを作成できます。基本的な共同作業に必要な機能が利用できます。
GitHub Team(有料)
GitHub Teamは、GitHub Freeの上位プランです。Organization(組織)内での管理機能が強化され、より高度な共同作業機能(プルリクエストのレビュー機能強化、ブランチ保護ルールなど)と、拡張されたGitHub ActionsやGitHub Packagesの利用枠が提供されます。ほとんどの中小企業や開発チームにとって、最もバランスの取れた選択肢です。
GitHub Enterprise(有料)
GitHub Enterpriseは、GitHubの最上位プランで、大規模な企業向けに設計されています。このプランは、エンタープライズアカウントを通じて複数のOrganization(組織)を一元管理できます。GitHub Teamの機能をすべて含み、さらにエンタープライズレベルのセキュリティと管理機能が追加されます。
※参考:GitHub「プランご紹介」
※この情報は、2025年8月18日時点のものです。最新の情報については公式サイトをご確認ください。
組織の成長に合わせて、FreeからTeam、そしてEnterpriseへと、柔軟にアップグレードすることが可能です。詳細な料金や支払い方法については、GitHub公式サイトで確認できます。
支払い方法も多様で、クレジットカードや請求書払いに対応しています。また、年間契約を選ぶことで、割引が適用される場合もあります。これにより、組織の予算管理がしやすくなります。
GitHub Enterpriseとエンタープライズアカウントの違い
最も混同しやすいのが「GitHub Enterprise」と「エンタープライズアカウント」という言葉です。
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GitHub Enterprise
これは、GitHubが提供する「製品名」または「プラン名」です。大規模な組織向けに、高度なセキュリティや管理機能を提供する最上位のサービス全体を指します。 -
エンタープライズアカウント
GitHub Enterpriseプランを契約した際に作成される「アカウントの種類」です。このアカウントは、企業全体のガバナンスを管理するための最上位の階層(親アカウント)であり、その傘下に複数のOrganizationを置くことができます。
簡単に言えば、「GitHub Enterpriseというサービスを利用するために、エンタープライズアカウントというものを作成する」という関係です。
エンタープライズアカウントとOrganization(組織)の関係性
「エンタープライズアカウント」は、「Organization(組織)」の上位に位置する統括管理のレイヤーでもあります。このエンタープライズアカウントを通じて、複数のOrganization(組織)を横断的に管理し、全社的なセキュリティポリシーの統一適用や監査ログの確認などが可能になります。
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Organization(組織) チームや部門ごとのリポジトリを管理する箱のようなものです。
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エンタープライズアカウント 複数のOrganizationをまとめて管理する親アカウントのようなものです。
GitHub Enterpriseプランの主なメリット
GitHub Enterpriseプランは、単に機能が多いだけでなく、ビジネスの成長と安全性を両立させるための戦略的なプラットフォームです。このプランのメリットは、その中核となるエンタープライズアカウントの機能によって実現されます。
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高度なセキュリティ
SAML認証、監査ログ、GitHub Advanced Securityなど、大規模な組織のセキュリティ要件を満たす機能を提供します。エンタープライズアカウントを通じてこれらのセキュリティポリシーを全社的に統一適用できるため、組織全体の安全性が確保されます。 -
柔軟なデプロイオプション
自社のインフラストラクチャやセキュリティポリシーに合わせて、最適な運用形態を選べます。-
GitHub Enterprise Cloud (GHEC)
GitHubが管理するクラウド上で運用するSaaSモデル。管理の手間が最小限です。 -
GitHub Enterprise Server (GHES)
自社のサーバーにインストールして運用するオンプレミスモデル。厳格なコンプライアンス要件に対応できます。
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集中管理
エンタープライズアカウントが親アカウントとして機能することで、複数のOrganization(組織)をまとめて管理できます。これにより、ライセンスや請求の一元化、そして全社的なガバナンスを確立できます。
まとめ:最適なGitHubプランを選択するために
本記事では、GitHubにおけるOrganization(組織)が、チーム開発に不可欠な共有アカウントであることを解説しました。GitHubは、このOrganization(組織)を基盤として、組織の成長段階やニーズに合わせた複数のプランを提供しています。
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小規模なチームやオープンソースプロジェクトには、コストを抑えつつ共同作業を始められるGitHub FreeやGitHub Teamが最適です。
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大規模な企業には、GitHub Enterpriseが最適な選択肢となります。
GitHub Enterpriseは、単にTeamプランの上位互換ではありません。その中核となるエンタープライズアカウントを通じて、複数のOrganizationを一元管理し、企業全体のガバナンスとセキュリティを確保できる戦略的なプラットフォームです。
また、GitHub Enterpriseは、運用形態に合わせて以下の2つの選択肢を提供します。
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GitHub Enterprise Cloud (GHEC) クラウドで運用し、管理の手間を最小限に抑えたい場合
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GitHub Enterprise Server (GHES) 自社でサーバーを管理し、厳格なコンプライアンスに対応したい場合
最適なプランを選ぶことで、開発者は安心して作業に集中でき、管理者は組織全体の安全性を高めることができます。貴社のビジネスの成長と安全な開発環境の構築のために、ぜひこれらのプランをご検討ください。