【担当者必見】GitHub Enterprise Server導入の検討ポイントと企業開発にもたらす価値

GitHub Enterprise Server（GHES）は、企業の厳格なセキュリティポリシーとガバナンス要件を満たすために設計された、セルフホスト型のバージョン管理プラットフォームです。オンプレミスやプライベートクラウドに導入することで、ソースコードなどの機密データを自社で完全に管理し、外部に依存しないセキュアな開発環境を構築できます。

本記事では、「自社にGHESは本当に必要なのか？」という疑問に答え、導入のメリットから具体的な検討のポイント、料金、他社製品との比較までを網羅的に解説します。

GitHub Enterprise Serverとは？

GitHub Enterprise Server（GHES）は、GitHubが提供するセルフホスト（オンプレミス）で利用できるソフトウェア製品です。

通常、GitHub.comはクラウド上で提供されますが、GHESは企業や組織が自社のオンプレミス環境やプライベートクラウド環境に直接インストールし、運用することができます。これにより、コードやデータへのアクセスを完全に制御できるため、高度なセキュリティとコンプライアンス要件を満たすことが可能です。

機能面では、GitHub.comで利用できる多くの機能（プルリクエスト、Issue管理、CI/CDツールであるGitHub Actionsなど）がGHESでも利用できます。

セルフホスト型とは

セルフホスト型（Self-Hosted）とは、ソフトウェアやサービスを、利用者が自社のサーバーやデータセンターに導入・管理・運用する形態を指します。クラウドサービスのように、提供事業者が管理するサーバーを利用するのではなく、物理的なサーバーや仮想サーバーを自社で用意する必要があります。

セルフホスト型とは、例えるなら「自分たちで建てる専用オフィス」です。ソフトウェアやサービスを、自社のサーバーやデータセンターに導入・管理・運用します。GitHub Enterprise Server（GHES）は、この「セルフホスト型」の代表的なサービスです。

セルフホスト型は、「自社のデータを自社で完全に管理したい」という強い要望を持つ企業にとって、最も適した選択肢と言えます。

なぜセルフホスト型を選ぶべきか？「オンプレミス」と「プライベートクラウド」

GitHub.comのようなパブリッククラウドサービスが一般的ですが、高いセキュリティとコンプライアンスが求められる企業にとって、セルフホスト型であるGHESの価値は非常に大きいです。

パブリッククラウドサービスとは

パブリッククラウドサービスとは、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platformなどの事業者が、不特定多数の利用者向けに提供するクラウド環境を指します。インターネット経由でアクセスし、サーバーやストレージ、アプリケーションなどを利用する形態です。

パブリッククラウドとは、例えるなら「共有のレンタルオフィス」です。AWSやAzureといった事業者が、多くの企業が使えるように場所（サーバー）や設備（ストレージ、アプリケーション）を提供してくれます。

GHESのようなセルフホスト型と比較した場合、以下のようなメリット・デメリットがあります。

オンプレミスとは

オンプレミスとは、企業が自社の施設やデータセンターに、サーバーやソフトウェアなどのIT資産を保有・管理して運用する形態を指します。

「on-premises（敷地内で）」という英語が語源で、クラウドサービスのように外部のデータセンターを利用するのではなく、自社の「敷地内」にシステムを置くことからこのように呼ばれます。

セルフホスト型はオンプレミスと同じ意味ではありませんが、密接に関連しています。

つまり、「オンプレミス」は「セルフホスト型」の一種と言えます。オンプレミスでシステムを運用する場合、それは「セルフホスト型」と言えますが、セルフホスト型のシステムが必ずしもオンプレミスとは限りません。プライベートクラウドで運用するセルフホスト型システムも存在するからです。

GHESをオンプレミス環境で運用することは、自社敷地内にソースコードを守るための金庫を置くことと同じです。これにより、外部に機密データを置きたくない、社内独自のセキュリティ要件を満たしたいといった企業の課題を解決できます。

GitHub Enterprise Serverをオンプレミスで運用する場合、企業は以下のようなメリットを享受できます。

プライベートクラウド環境とは

特定の企業だけが利用する閉鎖的なクラウド環境です。AWSやAzureなどのパブリッククラウド上に、自社のセキュリティポリシーに沿ってGHESを構築することも可能です。これにより、クラウドの柔軟性を享受しつつ、高いセキュリティを両立できます。

つまり、GHESは「外部にデータを置きたくない」「社内独自のセキュリティ要件を満たしたい」という企業の課題を解決する、最適なソリューションと言えます。

GitHub.comとGitHub Enterprise Serverの比較

どちらが自社に適しているかを判断するために、両者の違いを表で比較してみましょう。

GHESを導入する主なメリットは、以下の4点です。

メリット1：強固なセキュリティとコンプライアンス

最大のメリットは、機密性の高いソースコードを外部のネットワークから切り離した環境で管理できる点です。特定のネットワーク内からしかアクセスできないように設定することで、情報漏洩のリスクを最小限に抑えられます。金融機関や政府機関など、厳しい規制が求められる業界では特に重要です。

メリット2：完全なデータ所有権

すべてのデータは自社のサーバー内に存在するため、データの完全な所有権を保持できます。クラウドサービスに依存することなく、データのバックアップや管理を自社のポリシーに基づいて自由に行うことができます。

メリット3：カスタマイズと統合の自由度

社内システム（認証システム、CI/CDツールなど）との連携を柔軟に行えます。企業独自の要件に合わせたカスタマイズが可能になり、既存のワークフローにシームレスに組み込むことができます。

メリット4：安定したパフォーマンス

自社でリソースを管理するため、パフォーマンスや帯域幅を自社のニーズに合わせて調整できます。利用者が多い場合でも、安定した高速なアクセス環境を維持しやすいのが特長です。

GitHub Enterprise Server導入の3つの検討ポイント

GHESを導入することで、セキュリティやプライバシーを確保しながら、開発プロセスを飛躍的に効率化できます。

GitHub Enterprise Serverの主要機能

GitHub Enterprise Serverは、開発チームの効率を向上させるための多様な機能を提供します。これらの機能は、コラボレーションツール、レポート機能、ワークフローのカスタマイズオプションなど、多岐にわたります。これにより、開発プロセス全体をスムーズに進行させることができます。

コラボレーションツール

GitHub Enterprise Serverには、開発チームが円滑に協力できるようにするためのコラボレーションツールが備わっています。プルリクエストやコードレビュー機能により、コードの品質を高め、バグを早期に発見することが可能です。これにより、開発サイクルの効率化が実現します。

レポートとインサイト

GitHub Enterprise Serverは、プロジェクトの進捗状況を把握するためのレポート機能を提供します。これにより、チームのパフォーマンスを分析し、改善点を見つけやすくなります。データドリブンな意思決定をサポートし、プロジェクトの成功を支援します。

カスタマイズ可能なワークフロー

GitHub Enterprise Serverは、企業のニーズに応じてワークフローをカスタマイズできる柔軟性を持っています。ワークフローの自動化により、手動作業を削減し、効率的なプロジェクト管理が可能です。これにより、開発プロセス全体の生産性が向上します。

GitHub Enterprise Serverの料金

GitHub Enterprise Server (GHES) の料金は、年間契約のユーザーライセンス単位で決まります。一部の高度なセキュリティ機能や大規模なCI/CDの実行には、追加料金が発生する場合があります。

詳細な料金は公式サイトでは公開されていません。正確な見積もりが必要な場合は、GitHubの営業担当者または正規のGitHub認定代理店に直接お問い合わせいただくのが最も確実です。

GitHub Enterpriseプランの料金体系について

GitHubの公式サイトに掲載されている料金は、ウェブサイト版のGitHub（GitHub.com）というパブリッククラウドサービスを借りて使う場合の料金です。この料金体系には、大企業向けの最上位プランであるGitHub Enterprise Cloud（GHEC）も含まれています。

GHECは、GitHubに直接申し込む方法以外に、GitHubパートナーである認定代理店を経由して契約することもできます。認定代理店を利用すると、公式サイトの料金から割引が適用されるなどのメリットがある場合もあります。

一方、GitHub Enterprise Server（GHES）は、自社のサーバーにインストールして使う製品のため、公式サイトに料金は記載されていません。

このように、GHECとGHESでは、料金体系の確認方法が異なります。

なぜGitHub Enterprise Server (GHES)の料金は非公開？

GHES（GitHub Enterprise Server）は、公式サイトに料金が明記されていません。これは、「利用者の環境や要望によって料金が大きく変わるから」です。

GHESは、GitHubのソフトウェアをお客様の会社のサーバーに直接インストールして使います。そのため、ユーザー数や、どの追加機能（高度なセキュリティ機能など）を使うかによって、必要なライセンスやコストが変わってきます。

公式サイトの料金表に書かれているGHECは、すでに用意されたサービスを借りる場合の価格です。一方、GHESはお客様の環境に合わせて構築する製品なので、個別の見積もりが必要になるのです。

※参考1：GitHub「プランご紹介」
※参考2：システムサポート「GitHub Enterprise導入支援サービス」
※この情報は、2025年8月25日時点のものです。最新の情報については公式サイトをご確認ください。

GitHub Enterprise Serverのメリット

GitHub Enterprise Serverを利用することで、企業はセキュリティとプライバシーを保ちながら、開発プロセスを最適化できます。ユーザー管理や権限設定が容易で、チームの効率を向上させるツールが豊富に用意されています。さらに、他の開発ツールとの統合が容易で、ワークフローのカスタマイズも可能です。

GitHub Enterprise Server導入から運用までの具体的なステップ

Step 1: 導入計画の策定

まずは、導入の目的（セキュリティ強化、開発効率向上など）と、GHESを導入する環境（オンプレミス、プライベートクラウド）を明確にします。次に、必要なユーザー数やハードウェアスペックを確認し、移行スケジュールを立てます。

Step 2: GHESインストールと初期設定

システム要件を満たしたサーバーにGHESをインストールし、ライセンスキーを登録します。管理者アカウントやネットワーク設定など、初期設定を確実に行うことで、その後のスムーズな運用につながります。

Step 3: ユーザー権限とアクセス管理

管理者アカウントからユーザーの招待やチーム作成を行い、適切な役割と権限を付与します。LDAPやSAMLなどの外部認証システムと連携すれば、管理の手間を大幅に削減できます。

Step 4: 運用と最適化

導入後も、定期的なセキュリティ監査やパフォーマンス監視が不可欠です。サーバーの負荷状況を常にチェックし、必要に応じてリソースを拡張することで、安定した開発環境を維持できます。

GitHub Enterprise Serverのインストールガイド

GitHub Enterprise Serverのインストールは、システム要件を満たし、ステップバイステップの手順を確実に実行することで、スムーズに行えます。GitHub Enterprise Serverの導入は、計画的に進めることで、安全かつスムーズに行えます。このガイドでは、インストールの全体像を詳しく説明します。

1. インストール前の準備：システム要件の確認

GHESを導入する前に、まずシステム要件を満たしているか確認することが最も重要です。必要なハードウェアスペックやオペレーティングシステムについて、事前に公式サイトで詳しく確認しましょう。適切な環境を整えることで、その後のインストール作業をスムーズに進められます。

2. インストール手順：ライセンスの登録まで

準備が整ったら、手順に沿って確実にインストールを進めます。

3. 初期設定のポイント：運用の土台を築く

インストール後も、いくつか重要な初期設定が必要です。

これらの初期設定を正しく行うことで、強固なセキュリティの土台を築き、その後の効率的な運用が可能になります。

ユーザー権限とアクセス管理

GitHub Enterprise Serverでは、ユーザーの権限とアクセスを効果的に管理することが求められます。GitHub Enterprise Serveの導入を検討する上で、社内のセキュリティと効率を両立する権限管理は非常に重要です。適切なユーザーロールを設定し、チームの作成と管理を行うことで、セキュリティと効率を最大化します。このセクションでは、具体的な管理方法を紹介します。

ユーザーロールと権限設定

ユーザーごとに適切なロール（役割）と権限を細かく設定できます。これにより、開発者がそれぞれのプロジェクトで必要なリソースだけにアクセスできるようになり、セキュリティを確保しながらチーム全体の生産性を向上させます。プロジェクト管理の効率を高めるため、各ユーザーの役割に合わせた最小限の権限を付与することがベストプラクティスです。

チームの作成と管理

チームごとに権限を管理することで、プロジェクトの進行がよりスムーズになります。GHESでは、部署やプロジェクト単位でチームを作成し、メンバーの役割や権限を明確に設定できます。これにより、チーム内のコラボレーションが効率化し、プロジェクトの成功確率を高めることが可能です。

CI/CDツール連携：開発プロセスの自動化

GitHub Enterprise Server（GHES）は、CI/CDツールと連携することで、開発プロセスの自動化を強力に支援します。継続的なデプロイメントとインテグレーション（CI/CD）をスムーズに行い、開発効率を飛躍的に向上させましょう。

GHESと連携可能なツール

GHESは、以下のツールをはじめ、多くのCI/CDツールと簡単に連携できます。

これらのツールを活用することで、コードのビルド、テスト、デプロイを自動化し、開発サイクルのスピードアップと品質向上を実現します。

インテグレーションの設定方法

GHESとCI/CDツールの連携は、簡単なステップで完了します。

これにより、開発者はコードをプッシュするだけで、自動的にテストやデプロイが実行される効率的なワークフローを構築できます。

GitHub Enterprise Serverのカスタマイズ：独自の開発環境を構築

GitHub Enterprise Server（GHES）は、企業のニーズに合わせて自由にカスタマイズできます。独自のブランディングやワークフローの自動化により、開発チームの生産性を最大限に高めましょう。

カスタムテーマとブランディング

GHESでは、企業のブランドイメージに合わせてテーマをカスタマイズできます。ロゴや配色を変更することで、開発環境に統一感を出し、チームのエンゲージメントを高めます。

カスタムアクションの作成

GitHub Actionsを活用すれば、独自のカスタムアクションを作成し、特定のタスクを自動化できます。これにより、手動での作業を減らし、開発プロセス全体の効率と品質を向上させることが可能です。

GitHub Enterprise Serverのセキュリティ対策：機密性の高いデータを守る

GitHub Enterprise Server（GHES）の最大のメリットは、高いセキュリティです。機密性の高いソースコードを安全に運用するために、GHESが提供するセキュリティ対策について理解しておきましょう。

データ暗号化

GHESでは、データの暗号化がセキュリティの基本となります。通信中や保存されているデータを暗号化することで、万が一の事態でも情報漏洩のリスクを大幅に低減できます。これにより、企業の重要な知的財産を自社の管理下で確実に守ることが可能です。

定期的なセキュリティ監査

GHESを安心して運用し続けるためには、定期的なセキュリティ監査が不可欠です。システムの脆弱性を定期的にチェックし、発見された問題に対しては迅速に改善策を講じる必要があります。これにより、常に最新の脅威に対応し、リスクを最小限に抑えることができます。

GitHub.comからGitHub Enterprise Serverへの移行ガイド

GitHub.comからGitHub Enterprise Serverへの移行は、計画的に進めることでダウンタイムを最小限に抑え、業務への影響を軽減できます。ここでは、GitHub.comからGHESへの移行を検討する担当者向けに、具体的なステップを解説します。

1. 移行計画の策定

スムーズな移行には、事前の詳細な計画が不可欠です。以下の点を明確にしましょう。

2. データ転送の方法

移行プロセスで最も重要なのが、安全かつ効率的なデータ転送です。GHESでは、GitHubが提供する専用ツールを使用してデータを移行できます。これにより、プロジェクトの継続性を保ちながら、安全にすべてのソースコードとデータをGHES環境に移動させることが可能です。移行を成功させるには、事前の準備と計画が何よりも重要です。

エンタープライズユーザーサポート：安心の運用体制

GitHub Enterprise Server（GHES）は、導入後の安定した運用を支える充実したサポート体制を提供しています。万が一のトラブルや技術的な疑問にも、安心して対応できる体制を整えましょう。

利用可能なサポートオプション

GHESのエンタープライズユーザーは、以下のサポートを利用できます。

サポート利用のベストプラクティス

問題解決を効率化するために、以下の手順でサポートを活用することをお勧めします。

GitHub Enterprise Serverと他のバージョン管理システムの比較

GitHub Enterprise Serverを導入する際は、他の人気ツール（GitLabやBitbucket）との違いを理解することが重要です。

GitHub Enterprise ServerとGitLabの比較

どちらもソースコード管理と開発プロセスを効率化するプラットフォームです。

GitHub Enterprise ServerとBitbucketの比較

どちらも企業の厳しいセキュリティ要件に応えるためのセルフホスト型ソリューションを提供している点で共通しています。

まとめ

GitHub Enterprise Serverは、企業の厳しいセキュリティ要件を満たしながら、開発チームの生産性を向上させるための強力なソリューションです。「ソースコードを自社で管理したい」「セキュリティと効率を両立したい」と考える企業にとって、最適な選択肢となるでしょう。

GitHub.comのGitHub Enterprise Cloudのようなパブリッククラウドは、手軽さと運用コストの低さが魅力ですが、データの完全な管理はできません。一方、GitHub Enterprise Serverは、セルフホスト型としてオンプレミスやプライベートクラウドに導入することで、機密データを自社で完全に管理し、厳しいセキュリティ要件を満たせます。

どちらの選択肢が最適かは、企業のセキュリティポリシー、コンプライアンス要件、そして求める管理の柔軟性によって決まります。本記事で解説した導入のメリット、主要機能、コスト、他社比較を参考に、自社の状況に最も合ったバージョン管理ソリューションを選択してください。

GitHub Enterprise Serverの導入や料金についてさらに詳しく知りたい場合は、ぜひ日本国内にあるGitHub認定代理店に問い合わせしてみてください。